謹賀新年

Tuesday, January 1st, 2013

久々の投稿となってしまいましたが、
皆様、明けましておめでとうございます。

2013年は初めて共演させて頂くオーケストラやソリストが多く、またダンスの森山開次さん、日本舞踊の花柳寿輔さんといった他のジャンルのアーティストとの芸術創造の機会があります。今年も期待と刺激に満ちた一年になりそうです。

今年の年賀状のデザイン。いつもお世話になっているアーガイル・ストリートさんにイメージを伝え、それをうまくまとめて頂きました。

200年の時を越えて、世界中にヴァーグナーの上演空間が広がりますように。
ヴァーグナーのオペラ『パルジファル』内のテキストと共に。

copyright by argyle street design

El cant dels ocells

Thursday, July 21st, 2011


            写真提供:愛知県文化情報センター 写真:中川幸作 

7月21日(木)に東北復興支援チャリティーコンサートがありました。〈届け!あいちの祈り、音の翼にのせて〉と題されたこの演奏会は、愛知県立芸術大学の教授、卒業生、現役生の方々によるものであったのですが、ここ数年、愛知室内オーケストラ(県芸出身者による団体)を何度も指揮させて頂いているという由で、他大学出身の私もその輪の中に入れて頂きました。

私はこの日まで募金以外、震災に対して何も活動できていませんでした。早いものでは震災の2日後である3月13日に、その後も何度かチャリティーコンサート出演のお誘いが来たのですが、生憎スケジュールが合わず見送る日々が続いておりました。本来、人の心や社会のために音楽活動に従事しているはずなのに、肝心な時にそれができず、大変もどかしい気持ちを常に携えておりました。ですから、この演奏会にお誘い頂けて、またお引き受けできて、まずは嬉しく思いました。

演奏会は1・2部に分かれており、第1部は上記のように沢山の素晴らしい県芸にまつわる音楽家の皆さんが順に室内楽を演奏なさいました。自分の出番である第2部を待つ間、楽屋のモニターや舞台袖で皆さんの拝聴し、その高い音楽性にうっとりしつつ、また同時に緊張が高まってきました。

第2部では、愛知室内オーケストラの皆さん、愛知県立芸術大学BMKCohirの皆さん、オルガンの吉田文さん、そしてチェロの天野武子さんと、ベートーヴェンの交響曲第7番、バッハの『主よ、人の望みの喜びを』、パプロ・カザルス編の鳥の歌を演奏いたしました。音楽は人の心を一つにする根源的な力があります。音楽を通じて想起、祈念、追悼などの行為を、会場中の皆さまと一緒にできたのは、また普段とは違った特別な体験となりました。

演奏会は終わりましたが、参加させて頂いた事で満足することなく、これから先に更に何ができるかを自問しながら日々生活していきたいと思います。寧ろ、1年2年、10数年先こそ、音楽の力が問われるのかもしれません。

改めまして、震災で尊い命を失われた方々に深く追悼の意を表します。そして、被災地で過ごされている皆様に心からお見舞い申し上げます。一日も早い復興を強く祈っております。

3つの音からなる3つの作品

Sunday, July 10th, 2011

2011年前半は三重県とのつながりが多いシーズンで、7月10日(日)の津フィルの皆さんとの演奏会がその最後となりました。

曲目はリストの交響詩『前奏曲』、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番、ブラームスの交響曲第1番という19世紀半ばの、いわゆる中期ロマン派の作品が並んでいました。この『ロマン派』という言葉はとても大雑把で、一括りにしてしまうのはとても危険だと思うのですが、それぞれの作曲家の創作行為における差異や共通点を感じる事ができて、私自身『ロマン派』というものを見返す良い機会になりました。

ロマン派の音楽というとどうしてもその中身の感情面が注目されがちです。リスト自身、『感情は純粋音楽のうちに具現化される。その際、他の芸術、特に言語芸術と違って、感情は思考に屈したり無理に合わせたりする必要が無い。もし音楽が、他の表現形態に勝って魂の感興を再現できるとすれば、それは、悟性の助け無しに心の内面の動きをそのまま伝え得るという、音楽の最高の美質のお陰である。』と言葉を残しています。しかし作品の中でその感情を支えるのは、やはり圧倒的な構築力であり、その前の時代から脈々と流れている音楽語法に対する“悟性 Verstand[独]”なのではないかと感じます。尤も、リストの『前奏曲』は標題音楽ですので、この作品において彼の言葉は有効ではないのかもしれませんが。

最終的に津フィルの皆さんは、この感情と構成を一番良い所でバランスをとって下さったように思います。ブルッフでのヴァイオリン独奏の森彩香さんが、その美しい音楽で良い方向に導いて下さったのも、演奏会全体の雰囲気に大きく作用いたしました。心から感謝申し上げます。

永遠性に祈りをこめて

Sunday, July 3rd, 2011

蒲郡フィルハーモニー管弦楽団との定期演奏会が終わりました。シューベルトの交響曲第7番、ブルックナーの交響曲第7番という、これ以上考えられない最高の組み合わせのプログラムでした。共に、死に対する永遠性の問いかけ、宗教的な意味合いが強いE-Dur(4つの十字架の調)で、アンサンブル、技術云々といった演奏に際しての実務的な事よりも、作品と対峙する姿勢、作品への理解、心持ちが特に大事な作品であったように思います。

ベルリンに留学して初めてのレッスン、ベルリンに行くきっかけとなったベルリン・フィル来日公演で演奏されていたブルックナーの交響曲第5番見て頂こうと意気揚々と準備をしていったのですが、まず宗教とは何か、カトリックとは何か、そして祈る事とは何かということを諭され、指揮するのはその後だとそれだけでその時間は終わりました。この事は私にとってかけがえのない貴重な体験となり、いつもこの記憶を反芻しながら練習に通っておりました。とはいえ、先生に教えて頂いた事を生半可に口で語ってしまう事は非常に浅はかであるような気がいたしました。きっと強く音楽を感じていれば宗教を超えて語りかけてくるものがあると信じておりました。

蒲郡フィルの皆さんはとても向上心、探究心のある方ばかりで、時に練習時間を越えて沢山の質問を頂きました。共に音の意味を考えながら理解を深め、音楽を形作って行くスタイルは一つの理想でもありますから、これはとても嬉しく思いました。技術的には本当に難しく、いつまでたっても越えられない山がそびえたっているような気も正直いたしましたが、しかしそうした皆さんの熱意と音楽を感じる力で、本番特別な音楽の色が生まれた気がいたします。言葉で語り尽くせない、深遠なる世界を見させて頂きました。

初めて伺ったオーケストラ、そして街でしたが、実に楽しく快適に過ごさせて頂きました。皆さん、そして風土に感謝したいと思います。ヴァーグナー・チューバが自前で揃っているという珍しいオーケストラです。いつかまたブルックナーの世界でお会いしたいです。

写真はご出演されていた方から頂いたシューベルトの絵のついたマッチ箱です。絶対に燃やせません。

フォークロアとアイデンティティ

Saturday, June 18th, 2011

名古屋工業大学管弦楽団の定期演奏会が終わりました。以前共演させて頂いた時はヴァーグナー、ブラームス、シベリウスを取り上げましたが、今回はチャイコフスキー、ドヴォルジャークという東ヨーロッパの2人の作品でした。このように同じオーケストラとロマン派の幅広い作品に触れられることはとても幸せなことです。また今回は、ドヴォルジャークと言っても普段中々演奏されない2曲を取り上げましたので、そういう意味でも意義深い演奏会になったのではないかと思います。

交響詩『真昼の魔女』は日本では滅多に演奏されませんが、私がドイツ滞在中には何度か見聴きした作品でした。個人的な体験で言うと、ドイツのホーフという街で行われた指揮講習会で指揮した事があったり、あるコンクールの課題曲になっていて準備した事があったりで(病気になり出場を断念せざるを得なくなってしまいましたが)、いつか必ず演奏会で取り上げたいと夢見ておりました。今回予想外に早くに夢が叶い、とても嬉しく思いました。この作品、2つの印象的なモティーフが、交響曲の様な楽章様式を備えた構成の中に、話のドラマとともに発展していく名曲です。ドヴォルジャークが後期に開いた新境地と言ってもいいかもしれません。

一方で第6番の交響曲は中期の作品で、チェコ的なもの、スラヴ的なもの(民謡を素材とする主題、音程、拍節、リズム、転調、内容、思想)が全編ストレートに出た作品であり、また音楽史的に見てもロマン派の在り方、交響曲の在り方においてもマイルストーン的な重要な作品であるように思います。とはいえ、作品自体はとても清涼感があり、重い雰囲気や存在感を残さないのですが。

名工大オケは伝統的に熱さが持ち味のオーケストラである気がしますが、今回はその中にも素朴さ、味わい深さ、優雅さ、高貴な雰囲気などを大事にする瞬間が多くあって、これまでとはまた違ったスタイルの演奏になった気がいたします。本番での集中力も素晴らしく、全ての面で一番良い出来であったように思います。学生の皆さんとの本番は、その演奏会のために長期間練習をするので独特の緊張感があり、それがこちらにも伝わってきます。終わった後の達成感もひとしおでした。

アンコールはドヴォルジャークのスラヴ舞曲の第2集より第7番を演奏し、冒頭の『真昼の魔女』のC-Durと結びました。また皆さんと心弾むプログラムでご一緒できる日を祈っております。

ブラームスの厳粛な歌

Sunday, June 5th, 2011

四日市交響楽団の皆さんとの演奏会が終わりました。3年前からお声がけ頂いていたのですが、毎年なかなかスケジュールが合わず、ようやく今年ご一緒することができました。このオーケストラの事は客演なさっていた知人の指揮者方からよくお話を伺っていたのですが、その前評判通り家族的な温かさの溢れるオーケストラで、本番ではその温かさが熱さに変わり、とても勢いのある演奏となりました。

ブラームスを中心としたプログラムということで、その固有のサウンドを求めて練習を重ねて参りました。響きと時間の関係性の概念を大事にしつつ、そのための具体的な弓や息の使い方、音符の長さや処理の仕方に時間がをかけ、またホールでのサウンドチェックも入念に繰り返しました。本番ではその効果が出たでしょうか。舞台上と客席でかなり響きの差が出るホールだったので、それらはまた客観的なご意見を伺わなくてはと思います。

オーケストラの皆さんの向上心は本当に素晴らしく、それは当日のゲネプロまで感じることができました。知的な好奇心も旺盛でいらっしゃって、こちらも毎回新しい情報を発信できるように準備をしなくてはと心引き締めておりました。打ち上げの席でも、作曲家や作品について質問頂く事沢山で、もっと練習時間が多くあって色々とお話できる機会があったら良かったと思いました。

今年はブラームスに縁のある年で、来月は1番を、年末には2番を指揮させて頂きます。その作品そのものだけではなく、前後の作品を比較しつつまた新たな魅力を探っていけたらと思います。

笑顔溢れる市場にて

Friday, May 20th, 2011

岩倉北小学校音楽鑑賞会が終わりました。小学校に直接伺っての音楽教室は、自分の記憶が正しければ芸大の学生時以来10年振りくらいだったでしょうか。体育館の地べたに座って聴いて下さる生徒さんの呼吸やざわめきなどが指揮している背中越しにリアルに感じられて、それは普段の演奏会とはまた違った特別な体験でした。

知っている曲があれば顔を見合わせて歌い出し、大きな音が出ればうわぁと耳をふさぎ、盛り上がれば歓声があがりと、その素直で自然な反応が実に子供らしくて良いなと思いました。その反応でこちらの進行(曲間の長さ)などを変えなくてはと思います。そういう意味では一緒に音楽会を作っている雰囲気があり、楽しい時間となりました。

終演後、セントラル愛知交響楽団の事務局の方と控え室である会議室に戻っている時に、1人の女の子が駆け寄って来て、「事務のお兄さんがお仕事頑張っていて格好よかったよ。」と声をかけてくれたのが印象的でした。笑。

湖面が映すもの

Tuesday, May 3rd, 2011

関宿の後は亀山サンシャインパークへ。名前通りの陽光がないのが残念でしたが、広い敷地にウォーキングコースやバーベキュー場、子供用の遊び場などがあり、大変気持ちの良いところでした。

さざ波だった湖面を見るのが好きです。音楽で言うと高弦の細かいシンコペーションの感じ。リズムというよりか一つの音色のようなものに思えます。

よく見ると園内のアーチ橋を映し込んでいました。無機質な鉄塔も不思議と絵になる気がします。

関宿・文化の交差点

Tuesday, May 3rd, 2011

ゴールデンウィーク中、時間ができたので三重県の関宿に訪れました。駅の方から歩いて行くと、まず地蔵院にぶつかりました。

地蔵院の横には約2キロに渡る関宿の街道が延びています。200軒ほどの町家が綺麗に保存されています。東海道五十三次としては47番目の宿場町です。

観光地化されている綺麗さとはまた違った素朴な清潔感がありました。各民家の前に飾られている花々が茶褐色を基調とした街並にに色を添えます。

中にはアンティークの品々が置かれたお店、カフェなどがあります。こちらは『ナガオ薬局』。

さらに歩くと『而今禾』という天然素材工房があります。奥のカフェへ抜ける土間のような通路、この空間が気に入りました。

冒険心を駆り立てられる手すりのない木製の階段を登った2階からの眺め。また訪れたい場所となりました。

たくさんのノスタルジックな風景に癒された休日となりました。

教えられる事、刺激される事

Friday, April 29th, 2011

7人の若きソリストとの共演が終わりました。ピアチェーレ・ムジカの演奏会でした。4月初旬の打ち合わせから2回のオーケストラ合わせ、ゲネプロ、本番と着実に成長されていく皆さんの姿に、心底感心いたしました。本番、1曲毎に舞台袖にはけて、ほんの少しだけ次に舞台に出るソリストと顔を合わせる瞬間があるのですが、その時の皆さんの表情が実に落ち着いていらっしゃる事。自分が同じ立場であったらまず考えられません。本番の演奏からもその時間、空間を楽しんでいらっしゃる様子がしっかり伝わってきました。

このような企画のおかげで、普段なかなか接する事の出来ない曲と出会えます。モーツァルトの疑う事のない幸福感や無邪気な戯れに溢れた初期のピアノ協奏曲の、ヴィエニャフスキのリリシズムと構築感のバランスが絶妙なヴァイオリン協奏曲、ヴェーバーのストーリーが確立されていて、言わばオペラの様なコンチェルト・シュトゥック、グレツキの若きショパン風のピアノ協奏曲などです。それぞれの作曲家の今まで知らなかった一面が垣間見えて、とても勉強になりました。

セントラル愛知交響楽団の皆さんの温かいサポートにはいつも感謝せねばなりません。どのような種類の曲目、演奏会でも実に手際良く、そしてそれぞれの作風にあった演奏に瞬時に切り換えて下さります。5月の演奏会まで4回連続お世話になります。今後も宜しくお願いいたします。

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