米良美一さん、セントラル愛知交響楽団さんとの演奏会が終わりました。震災後間もなくの3月末でした。それまで新聞、テレビ、インターネットなどで悲惨な被害の情報を得る度に、何も出来ない自分に大変もどかしい気持ちがありました。またこのような時に音楽をやっている場合なのかという気持ちも芽生えなかった訳ではありません。悶々とした日々が続きました。しかし最終的には今自分ができる事、与えられた機会を精一杯遂行することが一番かと考え、気持ちを切り換えて演奏会に臨みました。そしてその気持ちは米良さんも同じだったようで、彼の曲間のお話にもそういう内容のものがありました。

自分が何一つ不自由なく大好きな音楽に携われている事に感謝し、またいずれ音楽を通じて精神的な部分でお力になれる時が来る事を信じ、祈る気持ちで演奏会を終えました。アンコールの『春の声』の歌詞のようにすぐには春が目覚めてくれないかもしれませんが、それでも一刻も早く完全に復興する日が来る事を心から願っております。

米良さんとは、故若杉弘先生のアシスタントをしていた時にブリテンのオペラ『ヴェニスに死す』でご一緒した事がありました。しかし、その時はまさか自分が同じ舞台に立てる日が来るとは思っておりませんでした。とても光栄な事でした。リハーサル中、一つ一つの曲の意味とその曲を取り上げる想いをお話下さった事はとても心に残っております。終演後、またの共演を約束いたしました。