名古屋工業大学管弦楽団の定期演奏会が終わりました。以前共演させて頂いた時はヴァーグナー、ブラームス、シベリウスを取り上げましたが、今回はチャイコフスキー、ドヴォルジャークという東ヨーロッパの2人の作品でした。このように同じオーケストラとロマン派の幅広い作品に触れられることはとても幸せなことです。また今回は、ドヴォルジャークと言っても普段中々演奏されない2曲を取り上げましたので、そういう意味でも意義深い演奏会になったのではないかと思います。

交響詩『真昼の魔女』は日本では滅多に演奏されませんが、私がドイツ滞在中には何度か見聴きした作品でした。個人的な体験で言うと、ドイツのホーフという街で行われた指揮講習会で指揮した事があったり、あるコンクールの課題曲になっていて準備した事があったりで(病気になり出場を断念せざるを得なくなってしまいましたが)、いつか必ず演奏会で取り上げたいと夢見ておりました。今回予想外に早くに夢が叶い、とても嬉しく思いました。この作品、2つの印象的なモティーフが、交響曲の様な楽章様式を備えた構成の中に、話のドラマとともに発展していく名曲です。ドヴォルジャークが後期に開いた新境地と言ってもいいかもしれません。

一方で第6番の交響曲は中期の作品で、チェコ的なもの、スラヴ的なもの(民謡を素材とする主題、音程、拍節、リズム、転調、内容、思想)が全編ストレートに出た作品であり、また音楽史的に見てもロマン派の在り方、交響曲の在り方においてもマイルストーン的な重要な作品であるように思います。とはいえ、作品自体はとても清涼感があり、重い雰囲気や存在感を残さないのですが。

名工大オケは伝統的に熱さが持ち味のオーケストラである気がしますが、今回はその中にも素朴さ、味わい深さ、優雅さ、高貴な雰囲気などを大事にする瞬間が多くあって、これまでとはまた違ったスタイルの演奏になった気がいたします。本番での集中力も素晴らしく、全ての面で一番良い出来であったように思います。学生の皆さんとの本番は、その演奏会のために長期間練習をするので独特の緊張感があり、それがこちらにも伝わってきます。終わった後の達成感もひとしおでした。

アンコールはドヴォルジャークのスラヴ舞曲の第2集より第7番を演奏し、冒頭の『真昼の魔女』のC-Durと結びました。また皆さんと心弾むプログラムでご一緒できる日を祈っております。