東西の融和するところ

Tuesday, March 29th, 2011

名進研の卒業記念コンサートが終わりました。今年で5回目のコンサートですが、私はここ3年携わらせて頂いております。年々内容が壮大になっており、毎年どのような演奏会になるのか楽しみにしていたのですが、今回は東儀秀樹さんとの共演がありました。

実のところ、これまで篳篥という楽器を生で見た事も聴いた事もなかったのですが、ゲネプロでその響きを体感し驚きました。あのリコーダーよりも細く小さな楽器から、あれだけ円やかで柔らかく、そして色気も感じさせる音が出るものなのでしょうか。自分のすぐ隣で吹いていらっしゃるのに、天空から降り注いで体を包むような響きでした。鳥肌とは体の表面的な現象ですが、そうではなくてより内部が震えるような反応をしてしまいました。セントラル愛知の皆さんの音色ももちろん素晴らしく、その響きの融合から東洋と西洋のつながりを感じる事ができました。

その感覚はあながち間違いではないようで、東儀さんが楽器のルーツやその音の意味するところをお話下さったのですが、西洋楽器との多くの共通点や親和性がある事を学びました。その他、笙や竜笛も演奏して下さいました。これを機会に雅楽ももっと勉強せねば思いました。

聴きに来て下さった未来ある若者達には、夢を持って前に前に歩んで行ってほしいと思います。その時に、傍らに音楽があれば、これほど嬉しい事はありません。

震災後のコンサート

Sunday, March 27th, 2011

米良美一さん、セントラル愛知交響楽団さんとの演奏会が終わりました。震災後間もなくの3月末でした。それまで新聞、テレビ、インターネットなどで悲惨な被害の情報を得る度に、何も出来ない自分に大変もどかしい気持ちがありました。またこのような時に音楽をやっている場合なのかという気持ちも芽生えなかった訳ではありません。悶々とした日々が続きました。しかし最終的には今自分ができる事、与えられた機会を精一杯遂行することが一番かと考え、気持ちを切り換えて演奏会に臨みました。そしてその気持ちは米良さんも同じだったようで、彼の曲間のお話にもそういう内容のものがありました。

自分が何一つ不自由なく大好きな音楽に携われている事に感謝し、またいずれ音楽を通じて精神的な部分でお力になれる時が来る事を信じ、祈る気持ちで演奏会を終えました。アンコールの『春の声』の歌詞のようにすぐには春が目覚めてくれないかもしれませんが、それでも一刻も早く完全に復興する日が来る事を心から願っております。

米良さんとは、故若杉弘先生のアシスタントをしていた時にブリテンのオペラ『ヴェニスに死す』でご一緒した事がありました。しかし、その時はまさか自分が同じ舞台に立てる日が来るとは思っておりませんでした。とても光栄な事でした。リハーサル中、一つ一つの曲の意味とその曲を取り上げる想いをお話下さった事はとても心に残っております。終演後、またの共演を約束いたしました。

六甲枝垂れ

Saturday, March 5th, 2011

六甲ガーデンテラス内にある三分一博志氏設計の自然体感展望台『六甲枝垂れ』に行ってきました。

自然エネルギーを活用した建築で、展望台という機能を超えて、季節や気象によって異なる自然の効果を体感できるようになっています。全体的には一本の大木を感じさせる作りですが、その幹の内部では煙突効果により換気が行われ、夏は涼しく過ごせるようになっています。逆に太陽熱を取り込んで冬には温かく過ごせる陽室というのもありました。また葉を思わせる部分は、樹氷が作られるよう意図されているようです。

展望台としては、六甲山の自然の向こうに広がる大阪、神戸の都市の風景を提供していました。天気も良く、気持ちの良い日を過ごせました。

遥かなる響き

Monday, February 28th, 2011

マーラー音楽祭第2回となるデア・フェルネ・クラングの演奏会が終わりました。プログラムはシベリウスの交響曲第7番とマーラーの音詩「巨人」の2曲でした。

私が個人的にそれぞれの作曲家から感じることは、シベリウスは大自然の中に人の営み、生き方や哲学を見出し、それをできるだけ切り詰められた、凝縮させられた素材(モティーフ)の中に表現を閉じ込めるタイプ、一方でマーラーは個人的な感情を自然の中に投影させ、スコアという額縁からはみ出さんばかりにその表現を広げようとしているということです。それぞれ後期の作品、初期の作品という時期の違いももちろんありますが、描くもの、音楽に語らせる方法が真逆といっても良いくらい対極の二つの作品を並べられたのは、面白い試みだったのではないかと思います。

またマーラーでは通常の交響曲第1番ではなく、そこに辿り着く前の音詩「巨人」で演奏したのも、こだわりの一つでした。ハンブルク稿を選んだ理由は、既に演奏経験のある交響曲の形にどのように行き着いたのか、その過程をメンバーと共に勉強したい、それによって新たなマーラー像が垣間見られれば、また再度交響曲を演奏する際にこの経験がいかせられたら、という気持ちがありました。もう少し細かく言うと、タイトルの「巨人」の本質的な意味、後にカットされてしまった花の章が描いていたもの、そのオーケストレーション的前後関係、交響曲に純化される過程で消えてしまった直情的な情熱、溢れんばかりの想い、描写音楽と純音楽の間での葛藤などを再認識したく思っておりました。また我々がこの曲を書いた時のマーラーとほぼ同じ歳ゆえ、綺麗になり過ぎていないスコアに対して、より共感できることがあるのではないかという狙いもありました。

このハンブルク稿の後に大幅な手直しを加えているように、実際の演奏現場ではそのままの音符の状態では演奏実現が難しい部分もあったのですが、高いレベルのオーケストラの協力の元にアーティキュレーション、ボーイングなど、バランス以外は殆ど操作せずに演奏実現できたかと思います。演奏会では現行版である交響曲との違いを楽しんで頂けたというのであれば幸いです。

オーケストラメンバーは我が出身中高のオーケストラ部のOB(男子校ゆえ)と立命館大学のオーケストラ部のOBOGが合わさって成り立っていました。このコンビネーションは奇跡といっても過言ではなく、雰囲気の良さ、アンサンブルレベルの高さを生み出しました。コンサートマスターを努めて頂いた方は私の中高大の後輩だったのですが、本当に素晴らしく全体をリードし、演奏をまとめあげて下さいました。この素晴らしい団体に誘って下さった団長、優秀なコンサートマスター、いつも積極的でいきいきとした素敵なメンバーにこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

メンバーの皆さんはこの演奏会に充実感を持って頂けたようで、打ち上げでは2年後に第2回を開くことが約束されました。今から再会が楽しみです。

新たな章へ向けて

Thursday, February 3rd, 2011

ベルリン音楽大学“ハンス・アイスラー”卒業演奏会が終わりました。これは卒業演奏会であると同時に卒業試験でもありましたが、全ての審査員から“Ausgezeichnung bestanden”を頂き、最優秀の成績でドイツ国家演奏家資格課程を修了することができました。このドイツ国家演奏家資格課程はドイツでコンツェルトイクザーメンと呼ばれるのですが、1999年のボローニャ・プロセス(いわゆるディプロム・マギスター・コンツェルトイクザーメンの3段階制度からバチェラー・マスターの2段階制度への変換)のあおりを受け、年々各大学で無くなりつつあります。我が大学でもここ5年程、少しずつその課程への進学者を減らしており、今では全科の中で2、3人が進める課程となっておりました。ちなみに、これから入学する人には準備されてない課程となります。ということで、この制度のほぼ最終期に資格を取得できたのは幸運といっても過言ではありません。とても光栄かつ、嬉しく思います。

さて、演奏会で私が指揮したのはチャイコフスキーの幻想序曲「ハムレット」で、オーケストラはもうすでに3度ご一緒させて頂いているコンツェルトハウス・ベルリンでした。こちらのオーケストラは、もちろん指揮者がディレクションを取らなくてはならないのですが、要所要所でオーケストラのメンバーがディスカッションを要求してきます。効率は度外視して、気になるところがあればその瞬間に徹底的に突き詰めていくこのやり方、この様な作業を繰り返していくうちにオケの皆さんの音にも説得力が生まれ、最終的には一体感が生まれてくるのかなとも思います。これぞ私がドイツで5年間経験してきたドイツ文化の一端を見る思いで、締めくくりの演奏会でそれを再び強く感じられたのはとても価値ある体験でした。

本番で感じたオーケストラのうねり、エネルギーは凄まじいものがあり、指揮台にしっかり立っていないと飲み込まれそうになりました。あの状態は一生忘れることは出来ません。本物の音楽をぶつけて下さったオケの皆様に心から感謝申し上げます。

また、5年間素晴らしい環境を提供して下さった音楽大学、第2の父のように愛情深く指導して下さったクリスティアン・エーヴァルト教授、数々の困難や危機から救ってくれた友人、家族、感謝してもしきれぬ方が沢山おります。これからの活動で恩返しが出来るよう、学生という立場を離れたこれからもしっかりと精進して参りたいと思います。

同じ木の二つの果実

Sunday, January 16th, 2011

マーラー音楽祭第1回演奏会が終わりました。大きなプロジェクトの1回目の演奏会ということで大きな責任と、それに伴う緊張を感じましたが、オーケストラの皆さんの熱意、プロジェクトを支えるスタッフの皆さんの温かさもの元に、無事成功させることができたと思います。

前半のマーラーの『さすらう若人の歌』、ツェムリンスキーの『メーテルランクの詩による6つの歌曲』は、とにかくソリストの原田圭さん、富岡明子さんが素晴らしかったです。お二人の、言葉を大事にそして明瞭に伝える歌唱、深みと艶のある音色、劇的な表現は、私達を一つ上の山に引っぱり上げて下さり、それまで見ることのできなかった風景を感じさせて下さいました。知的好奇心と探究心の強いオーケストラのメンバーは、曲の解釈、テキストの意味を理解するや否やそれをすぐさま音で描写して下さり、この点大いに驚かされました。

ハンス・ロットの交響曲にはそれ以前の作曲家であるヴァーグナー、ブルックナー、ブラームスからの影響が色濃くみられ、そしてそこにはまた後のマーラーにつながる要素が沢山詰まっております。そういった意味で音楽史的に見て決して知り欠くことのできない作品でありますが、それを紹介という形のみならず、大きな感動でもって演奏できたことはとても喜ばしいことでした。ロットの理想が溢れんばかりに詰め込まれたスコアゆえ、実演では操作しないと難しいところもありましたが、できるだけ素材に手を加えないよう心がけました。その難しい要求にもメンバーはしっかりと応えて下さったように思います。

オストメールとしては、次はマーラー音楽祭第1部の最後、第12回に出演し、マーラーの10番の補筆完成版を演奏いたします。オストメール単体でみると10回目という記念すべき演奏会です。どの版を使うかは未決定ですが、既にクック版では演奏いたしましたので、それ以外の版ということになりそうです。こちらもとても楽しみです。

伝統と革新のベートーヴェン

Sunday, December 26th, 2010

今年最後の演奏会は熊本での「第九」でした。オーケストラの熊本交響楽団とは去年、今年と既に2回演奏会を重ねさせて頂いておりましたが、コーラスの皆さんとは初めましての状態でした。初回の合唱練習から家族的な温かい空気を感じたのは県民性であるのか熊響の時と同じで、もちろん緊張感と集中力もあるのですが、その中でも一つ一つの確認作業、意思疎通が落ち着いてできたような気がいたします。

本番での皆さんの熱唱が忘れられません。オーケストラの皆さんも歌詞なき音を歌い上げました。シラーの詩、ベートーヴェンの音楽が共鳴した思想の元、舞台上の皆さんと一つの「兄弟」になれたらと思っておりましたが、どのように響いたでしょうか。少なくとも本番特有の一体感を感じことは間違いありません。また、ソリスト4人の素晴らしい声、アンサンブルにも感動しきりでした。

熊本でご縁が続き、このような機会を頂くことが出来ました。人の輪、ご縁というものに感謝しつつ、幸せに歳を越したいと思います。

くまにちコムに記事が掲載されました。
http://kumanichi.com/news/local/main/20101227002.shtml

写真は滞在中に訪れた山鹿の八千代座です。

終演後の宝物

Tuesday, December 21st, 2010

山田高校の芸術鑑賞会がありました。昨年度まで山田高校で音楽を教えていらしゃった方がオーケストラ内にいらっしゃって、その方が司会をなさったこと、器楽アンサンブル部の皆さんと「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲を共演したこと、生徒・先生による指揮体験コーナーがあったことからか、客席の皆さんと舞台上の私たちの距離がとても近かったように思います。運命を振って下さった皆さんの指揮には、会場が一気に沸きあがりました。

愛知室内オーケストラの皆さんの演奏会を堅苦しく感じさせない衣装、季節柄クリスマスやお正月を想起させるメロディーを使った楽器紹介など、細やかな配慮が徹底されており、毎度のことながら「芸術鑑賞会」というものにかける熱意を感じさせられました。駅までの帰り道、たまたま一緒になった生徒の皆さんに気持ちの良い挨拶を頂きました。普段終演後にこのような交流はないので、ダイレクトな感想を頂けてとても嬉しかったです。

迸る情熱と溢れる想い

Saturday, December 18th, 2010

岐阜大学管弦楽団との初めての演奏会がありました。メンバーの方一人一人の弛まぬ努力が実った演奏だったのではと思います。半年かけて練習に打ち込んできた皆さんの想いが音に溢れていました。皆さんとは、初回の練習前の打ち合わせから「共通認識」をテーマにしてやってきました。これは、曲に対する解釈、見方の統一という意味であったり、私がいない時の練習の進捗状況の把握であったり、メンバー1人1人のパーソナリティを知る事だったりしたのですが、そういう意味で、演奏曲目であったハチャトゥリアンの楽曲分析の講座の機会を作って頂いたり、細かいセクションでの分奏をみさせて頂いたり、またトレーナーの先生との連携、団の技術委員の方から細やかな報告を頂いたりしました。それらが綺麗に演奏会に結びついたのではないかなとも思います。

そこまでオケの皆さんとは年齢が離れていないつもりではいましたが、30代にはない何かに取り憑かれたのような情熱を感じ、とても刺激を受けました。そして全員の素直な人間性に、いつも気持ちの良い時間を過ごさせて頂きました。本当にありがとうございました。

煌めきの未来へ

Sunday, December 12th, 2010

名古屋開府400年・クロージング記念コンサートが終了しました。兎にも角にも中高生約800人のピュアで真っ直ぐな声に大きな感動をもらいました。どの曲にも彼らが楽譜から読み取ったメッセージがしっかり詰まっていて、声の表情が豊かでした。表現することに意欲的な目も忘れられません。名古屋の音楽的将来がとても明るく感じました。また曲数が多いのにも関わらず、どの作品も丁寧に形作って下さった名古屋フィルの皆さんにも感謝申し上げたいと思います。オープニング・コンサートも指揮させて頂きましたが、このように名古屋の街を挙げての大イベントに携われてとても光栄でした。

終演後、どうしても参加して下さった中高生に感動の御礼を伝えたいと思い、誠に勝手ながら各参加校にメールもしくはファックスを送らせて頂きました。ある学校の皆さんからは心のこもったお便りまで頂き、益々心が熱くなりました。この場を借りてもう一度御礼申し上げたいと思います。

はち丸公式ブログ内にてコンサートの様子を紹介して頂きました。
http://ameblo.jp/nagoya400/archive12-201012.html#main

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